賃金不払残業に係る是正支払の状況

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昨年度の賃金不払い是正指導状況が公表されています。
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/h1022-4a.html
調査対象1企業平均の是正支払は1,263万円

従業員がいつ労働基準監督署や労働組合に相談してもおかしくない時代になっています。今一度職場の見直しをしていただきたいと思います。
特に、法外の残業、賃金未払いがあった場合会社名とともに報道されます。テレビとは違い、ネットではずっと残りますから、誰かがその会社名で検索するとそういった情報が長い間表示されることになります。
http://mainichi.jp/area/kagawa/news/20091021ddlk37040594000c.html

また、送検の可能性もあります。平成20年度労働関係送検の34%は賃金不払い関連です。(再三の請求に対しても払わない、払っていないのに払ったと虚偽の申告を行った場合など)
http://www.roudoukyoku.go.jp/news/2009/20090416-shihou/hyo02.html#03

特に注意が必要な点だけまとめます。

◆従業員の残業申告が実際とあっているか
労働時間を従業員の申告制にしている会社が多くあります。その場合でも会社は申告どおりの残業代を払っていれば良いわけではなく、申告労働時間が実態と合致しているか必要に応じて実態調査を実施することが要求されています。

過少申告が長期にわたり会社が実態調査をしていない、なんらかのプレッシャーがあった、日誌・パソコンのログオフ記録・同僚の証言・建物への入退館時刻を記録した電子データなどにより実際の残業時間が推定できる場合は支払う可能性が高くなります。

残業の上限を定め、それ以上は申告させていない場合も同様です。
また、原則はタイムカード等により管理すべきで、申告制はやむをえない場合に限られると厚生労働省の指針では示されていることに留意すべきです。
(賃金不払残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針 H15.5.23 基発第0523004号)
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/dl/h1022-4c.pdf

◆家に持ち帰り残業をしている
持ち帰って残業しなければできないほどの業務を与え、知っていながら黙認しているような場合は残業代を支払う必要があります。

まずは、持ち帰り残業を原則禁止にしてください。その上で持ち帰らなければできないほどの業務を与えない、持ち帰っていることが分かったら指導を行ってください。

◆管理職だから残業代を払っていない
残業代を払わなくて良い管理職の範囲は、会社での呼称で決まるものでも、あるいは会社が自由に決められるものでもありません。実態から該当するかどうか判断されます。

管理職と判断される場合には以下に該当する必要があります。

  • アルバイト、パート等の採用、雇い止め、解雇等について権限がある
  • 部下の人事考課についても大きな(最終)権限がある
  • 勤務割表作成、残業の命令についての責任と権限がある
  • 勤務時間もある程度自由にし、遅刻早退について減給、人事考課上の不利益がない
  • 人が足りず、長時間労働を余儀なくさせるという状況は無い
  • 勤務態様、勤務内容等は部下と異なる
  • 時間単価に換算した場合、アルバイト、パートよりある程度額が多い

※管理職と判断されたとしても深夜残業に対する割増は必要です。

◆残業代は給与に含まれている
最初から一定時間の残業代を含んだ形で給与を支払うことは違法ではありません。
ただ、その場合も
・一定時間を超えたら残業代の支払いが必要
・含んでいる残業時間そして、それに対する賃金がいくら分なのか明確にすること
・その賃金は基本給などに比例して段階的に決められていること
などが必要です。

◆外回りの営業だから残業代は払っていない
外回りの場合、労働時間が把握できないとのことで若干の営業手当のみ払い、残業代を払っていないケースが見受けられます。

外回りであっても、原則労働した時間に対しては(割増)賃金を払わなければなりません。それが免除されるのは以下に該当する限られた場合のみです。

・営業手当が残業代の代わりとして支給されている
上記「◆残業代は給与に含まれている」と同様の状況です。
残業何時間の代わりとしていくら支給する、と明確になっていなければそれでも構いません。
問題はそうなっていない場合で、例えば営業に使うスーツ、靴、飲料水などに使うために支給されていると考えることもできます。その場合、営業手当を含んだ額が割増賃金算出のもとになります。

・外回りの場合労働時間が把握できないため、定時に終わったと「みなす」
みなすとは事実がどうあれ、そう決め付けるということを指します。反証があっても覆すことはできません。
ただ、その場合も
事業場外で従事する同じグループの中に労働時間を管理するものがいない
携帯電話等で随時使用者の指示を受けながら労働するわけではない
訪問先帰社時刻等の具体的な指示を受けて外出したわけではない
ことが求められます。
また深夜残業に対する割増は必要です。

◆年俸制だから残業代は払っていない
賃金支払い形態によって残業代が左右されることはありません。
年俸制であっても残業代を払わなければならないのは同じです。(ただし、管理監督者あるいは固定残業代込にすることは可能です。)
特に残業代の計算方法に注意してください。(◆割増賃金計算方法が怪しい参照)

◆端数処理
労働時間管理、あるいは給与計算方法で認められている端数処理は以下の通りです。それ以外の会社独自の処理方法は賃金全額払い違反、もしくは減給の制裁に該当する可能性もあります。

  • 1ヶ月における時間外労働、深夜労働の1時間未満の端数で30分未満を切り捨てそれ以上を1時間に切り上げること
  • 1時間あたりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じ、50銭未満を切り捨て、それ以上を切り上げること
  • 及び1ヶ月合計で1円未満の端数が生じた場合に同様の処理をすること
  • 1ヶ月の賃金支払額に100円未満の端数が生じ、50円未満を切り捨てそれ以上を100円にすること、及び1,000円未満の端数を翌月に支払うこと(これについては就業規則に定めること)

ことは認められます。

◆割増賃金率がおかしい

時間外労働 +25%以上
深夜労働 +25%以上
時間外+深夜労働 +50%以上
休日労働 +35%以上
休日+時間外労働 +35%以上
休日+深夜労働 +60%以上

※来年4月以降大企業は1ヶ月60時間を超えた時間外労働の場合 +50%となります
深夜とは原則午後10時から午前5時までを指します

◆割増賃金計算方法が怪しい
上記○%をかける前の基本賃金は以下のように算出します。いずれも1時間あたりの賃金単価を出します。

時給 時給額
日給 日給額÷1日の所定労働時間数
週給 週給額÷週の所定労働時間数
月給 月給額÷月の所定労働時間数(※1)
出来高払いその他請負 賃金算定期間の賃金総額÷当該算定期間の総労働時間数
年俸制 年俸額÷12÷月の所定労働時間数(※2)

※1:月によって所定労働時間数が異なる(30日、31日)場合は
(365日-年間総休日)÷12×1日の所定労働時間 により算出します
※2:確定年俸(年収が全額決まっている場合)なら賞与も割増賃金計算の基礎となります。賞与が査定により支給される場合は賞与分を除いて構いません)

また、手当に関しては除けるものとそうでないものがあります。

扶養家族に応じて支払われる家族手当 ×
扶養家族に関係なく支払われる家族手当
通勤距離に応じて支払われる通勤手当 ×
通勤距離に関係なく支払われる通勤手当
別居手当 ×
子女教育手当 ×
住宅に要する費用ごとに支払われる住宅手当 ×
住宅に要する費用に関係なく支払われる住宅手当
臨時に支払われた賃金 ×
あらかじめ額が確定していない賞与 ×
あらかじめ額が確定している賞与
特殊作業手当、危険作業手当
夜間看護手当 ×

○:割増賃金算定時に含まれる、×:含まれない

◆従業員の相談窓口を作っているか
外部でも内部でも構いませんが従業員が直接労働基準監督署や労働組合にかけ込む前に相談できる窓口を設置すべきです。

賃金不払残業解消のための具体的取組例
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/10/dl/h1022-4d.pdf

因みに残業時間に関する調査では

  • 「平均的な実残業時間」の平均は35.7時間。「多いときの実残業時間」の平均は66.5時間
  • 「理想的な残業時間」は22.2時間。「許容できる最大の残業時間」は49.8時間。
  • 残業時間が多いと感じている人の割合は、平均残業時間20時間以内の人は19.8%、21~40時間の人は47.9%、41~60時間の人は77.9%、61~80時間の人は90.7%に。
http://jinjibu.jp/GuestNewsTop.php?act=lst1&gr=2&id=3558

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