判例からみたパワハラのリスクを防ぐ方法

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前回、パワハラの判例をまとめました。
http://lsconsul.com/mt/2009/09/post-49.html

そこから、企業としてパワハラによるリスクを軽減するためには何に注意すべきか、考えてみたいと思います。結論だけ簡単にまとめると

・グレーな部分は仕方ないにせよ、度を超した(物理的、心理的)暴力、勧奨は極力避ける
 (→慰謝料が高額になる)

・嫌がらせなどを目的とした業務命令、配置転換はしない
 (→権利濫用無効、不法行為となる)

・休業、通院などのシグナルを早期に発見し、対応する
 (→放置していると、働けなかった日について賃金未払い請求をされる)

・死亡に至らないよう、周りがフォローする
 (→死亡した場合は逸失利益も加わり賠償が高額になる)
といったところでしょうか。

◆パワハラに関するアンケート
・あなたのまわりでパワハラはありますか。
 56.1% ない
  3.6% 無回答

・パワハラを行った理由は何ですか
 1. 54.3% 部下のパフォーマンスが上がらなかった
 2. 42.9% 上司と部下の感情的対立
 3. 28.6% 上司の感情や人格による
 4. 17.1% 上司に対する部下の振る舞い、会社組織・人事の不備

・パワハラを受けた人について、理由は何だと思いますか
 1. 84.1% 上司の感情や人格による
 2. 58.5% 上司の無知
 3. 53.2% 会社組織・人事の不備
 4. 46.5% 上司と部下の感情的対立

 出典:http://www.nikkeibp.co.jp/archives/318/318130.html

約4割の職場で、パワハラがあると回答されています。

また、パワハラを受けた側から見ると、パワハラの原因のほとんどは上司の無知、性格上の問題と考えられているようです。

◆厚生労働省の動向
パワハラに関しては基準やパンフレット等はあまり出されていません。

ただ、最近「いじめによる精神障害等の業務上外認定について」などが発表され、その中で労災認定の判断基準となる心理負荷表が変更されました。

その1つに、「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の追加があります。
これは業務指導の範囲を逸脱し、被災労働者の人格や人間性を否定するような言動によるいじめを指しますが、この場合は心理負荷が「強」となり、他の要因がなければ労災認定される可能性が非常に高くなります。

実際に平成19年には
「目障りだから、そんなちゃらちゃらした物は着けるな。(結婚)指輪は外せ」「主任失格」、「おまえなんか、いてもいなくても同じだ。」などの上司の発言は人格、人間性を否定するような言動であり、業務との因果関係があると名古屋高裁が認めています。


さて、パワハラを防ぐ方法ですが、かなり厳しいところまで要求されています。
まずは、判例を1つ見ていただきます。少し詳細に書きます。

◆ファーストリテイリング(ユニクロ店舗)事件
・従業員Xはユニクロ店にて勤務。従業員間の連絡事項を記載する「店舗運営日誌」に「店長へ」として前日の陳列商品の整理、売上金の入金などに関する店長Yの不備を指摘し、
「処理しておきましたが、どういうことですか?反省してください」と記載。
店長Yは従業員Xを呼びつけ、「これ、どういうこと」と説明を求めた。

・これに対しXは「事実を書いただけです」「2回目でしょう。どうしようもない人だ」と言い、鼻で笑う態度を示した。

・この態度に店長Yが胸倉をつかみ壁に3回ほど打ちつけ、頭もロッカーに3回ほど打ちつけた。

・その後も口論が続き、「それって脅迫ですか、辞めさせられるものなら、辞めさせてみなさい。そんなことをしたら、あなた首ですよ」、「もう、あなたと話しても無駄です」などとXが発言。

・その後、Xは気分が悪くなり、救急車で病院に搬送され、CT等の検査を行う。

・後日より、Xは精神科へ通院するようになり、外傷後ストレス障害と診断される

・さらにXは管理部部長に電話し、本件事件の報告書の開示を求めた際に部長より「いいかげんにせいよ、お前。おー、何考えてるんかこりゃあ。ぶち殺そうかお前。調子に乗るなよ、お前」などの発言を受ける。

Xが不法行為に基づく損害賠償を請求、これに対し名古屋地裁は、

・暴行について違法性は明らか

・さらに管理部部長の発言も、Xがストレス障害を受けているということを知っての上での発言であり、違法、不法行為を構成する

・但し、被害妄想、他人との関係に敏感、正義感が強い、論理的に相手を問い詰めるなどX本人の性格的傾向による影響もあるため、損害額から60%を減額

賠償
治療費及び入院費等    118,000円
休業損害         19,047,636円
慰謝料               5,000,000円
減額              - 14,499,382円
労災保険からの支給 -  7,619,054円

と判決。


いかがでしょうか。
もちろん、暴力はいけません。しかし、どのような発言を部下からされても冷静に受け止めるよう全ての管理職に徹底させなければならないということになります。

(この件については、暴力を振るわず、そのまま解雇したとしても負けていたでしょう)

◆パワハラを防ぐには
①度を超した(物理的、心理的)暴力、勧奨は極力避ける
認められるのは業務に関する、事実に基づいた、合理的な叱責です。

・「存在が目障りだ」等人格、人間性まで否定する言動
・物理的暴力
・30数回にわたり退職勧奨の面談を行う
・面談中大声を出し、机をばんばんたたく
・寮や実家まで出向く、退職を説得してくれと家族にまで頼む
・軽微な過誤について、あるいは嫌がっているのに執拗に反省・始末書を求める
 (嫌がるなら、事実確認書と本人の言い分を書いた書類をもらうにとどめましょう)
・確たる証拠がないのに、「(横領を)お前がやっただろう」などと決め付ける

などは問題です。

②業務上必要がない、あるいは嫌がらせなどを目的とした業務命令、配置転換はしない
業務命令、配置転換、降格などはある程度は会社の裁量として認められていますが
必要ないもの、過度の負担を強いるもの、嫌がらせなど不当な動機で行われるものは許されません。

・長期にわたり業務を取り上げる
・業務上必要のない就業規則の書き写し、草むしりなどをさせる
・退職させることを目的とした、通常ありえない配置転換、嫌がらせ
・達成が非常に困難なノルマと、それに関わる過度な叱責

などが該当します。

③休業、通院などのシグナルを早期に発見し、対応する
叱責、いじめなどがあった場合は、その後精神疾患を発症していないか注意したほうが良いでしょう。

・会社側に原因がある場合、休業中の賃金を請求されます
・雇い主には加害行為を防止し、身体の安全に配慮する義務があります。
・部下などを使って適切に変調を把握することができたはず、との判示もあります。

特に、死亡に至らないよう、周りも含めフォローするようにしましょう。
精神疾患→自殺となった場合は、大幅に損害賠償額が増えます。

 

逆に、パワハラに悩んでいる従業員の方は
・上司の言動について日時、場所、内容などを克明に記録
・特にそれが業務上のことなのか、そして必要性があるのか、人格を否定するものでないか記録
・雇い主、会社としてその事実を認識しうる状態にあるかどうか記録
・上司の言動に不当な動機、目的がないか考える
・精神的に辛い場合は、迷わず病院にて診断を受ける
・無理して会社に行くと、精神的な損害が少ないと判断されるため、無理せず休む
・会社や上司には従業員の身体の健康、安全を守る義務があるがそれを果たしていると言えるか、また本来はどのような義務を果たすべきであったか(最近の裁判ではここまで問われる)を考え、記録などをしておくと良いでしょう。

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