高年齢者の再雇用

前回、高年齢者の労務管理について書きましたが、今回はその続きを。

高齢者を雇う上で
・継続勤務とするべきか再雇用にするか
・その時の基準、所定労働時間、賃金はどうすべきか
など、考えることはいろいろあります。そして重要なことは、それぞれの対策は60歳になる前から進めなければ手遅れになるということです。
今回は具体的な注意点について考えてみたいと思います。

ところで、話は変わりますが、こちらに高齢者の日常生活アンケートが掲載されています。
http://www.h2.dion.ne.jp/~bfl/TAO_questionnaire_all.htm

具体的にお書きください、のところのコメント。
妙に納得してしまうものが多いのですが、これはどういうことでしょう。(どうでもいいですが)

◆改正雇用安定法への対応
スケジュールに従い、一定の年齢以上について
①定年年齢の引き上げ
②定年制の廃止
③継続雇用制度
のいずれかを導入しなければなりません。

スケジュールは
H19.4.1 - H22.3.31   63歳まで義務、65歳までは努力義務
H22.4.1 - H25.3.31   64歳まで義務、65歳までは努力義務
H25.4.1 -        65歳まで義務
となっています。

通常の企業は①②を選択することは、高い給与をそのまま維持することになり、非常に厳しいと思います。ただ、もし経営上余裕があり、どうしてもそれが希望という場合は下記助成金を申請しながら導入を図ります。

◆定年引上げ等奨励金

要件
①65歳以上に定年を引き上げ
②70歳以上に定年引上げもしくは定年を廃止
③(希望者全員を対象とする70歳以上までの継続雇用制度を導入)
④(希望者全員を期間の定めのないあるいは65歳以上までの契約期間で雇う)
のいずれかに該当する雇用制度を導入した事業主であり、
⑤雇用保険に加入している中小事業主

支給額
①企業規模により 40から80万円
②企業規模により 80から160万円
③企業規模により 40から80万円
④企業規模により 20から40万円

詳細は:http://www.jeed.or.jp/elderly/employer/subsidy/subsidy30-2.html
その他:http://www.jeed.or.jp/elderly/employer/subsidy/subsidy30-3.html

ただ、実際に定年を大幅に引き上げることはなかなか難しいでしょう。
通常は、継続雇用制度を導入します。

◆継続雇用制度(再雇用)
会社が定める一定の基準に達する人を再雇用することになります。

基準は
・勤労意欲に富み、引き続き勤務することを希望すること
・過去○年間の平均考課が~以上であること
・過去○年間の定期健康診断を受診し、その結果から就業に支障がないと産業医が判断したこと
・定年退職○年前の時点で、本人に再雇用の意思を確認し、気力について適当と認められるもの
・過去○年間の出勤率が○%以上のもの
・60歳以降に従事する業務を遂行するうえで健康上支障がないと判断されること
・過去○年間の賞与考課が管理職○以上、一般職○以上であること
・過去○年間に懲戒処分を受けていないもの(または懲戒処分該当者でないこと)
・会社が提示する職務内容・労働条件に合意できるもの
・無断欠勤がないこと
・工事・保守の遂行技術を保持していること
・指導教育の技能をもつもの
・定年退職後直ちに業務に従事できるもの
・自宅もしくは自己の用意する住居より通勤可能なもの
・勤続○年のもの
・協調性があり、勤務態度が良好なもの
・再雇用においては株式会社○○だけではなく、当社グループ会社での雇用となる場合があることを了承する者。

などありますから、各社にあった条件を設定しましょう。

因みに、
・会社が必要と認めた者に限る
・上司の推薦がある者に限る
・組合活動に従事していない者
・過去○年間の人事考課が○以上である者であって、かつ、会社が必要と認める者
などは基準として設定してはならない、とされています。

◆再雇用時の雇用形態、賃金設計
60歳前半は、通常の賃金のほか、年金、雇用保険から支給される可能性があり、それらをいかにうまく組み合わせて手取り額が50代からあまりに減らないようにするかが重要です。
制度の詳細は
http://www.sia.go.jp/sodan/nenkin/todokede_ans02.htm
にありますので、ご参照いただき、今回はポイントだけ列挙したいと思います。

・55歳から再雇用に向けた動きを
55歳ころから全体的に制度についての説明、再雇用の意思、基準などを伝えます。そこで、会社として継続して働いてほしい人には、なるべく基準を満たしやすいように取り計らいます。

・58歳時点でより詳細な打合せを
58歳時点で年金見込額のお知らせが届きます。これはあくまで見込みの数字ですが、年金のおおよその額が分かりますからこれを元に、60歳以降のモデル賃金、その時の手取り金額の提示を行います。

・59歳時点で賞与額を修正
59歳時点の賞与は60歳以降の支給される年金に影響を与えます。本人の同意を取った上で、月給が45万円に満たないようであれば賞与分を給与として毎月支給。45万以上であれば退職金に算入し、いずれにしても賞与の金額は限りなく0にしましょう。

・60歳時点で雇用形態を選択
厚生年金に加入する程度(概ね正社員の3/4の労働時間)働くかどうかを決めます。

①勤務を少し減らし、厚生年金に加入しない
年金は減額なく、全額受け取れます。ただ、厚生年金は増えない、傷病手当金がもらえない、また奥さんは年齢にもよりますが国民年金保険料を自分で払わなければならない、等のデメリットもありますから注意が必要です。
一般的には週20時間以上で30時間未満(正社員が週40時間労働の前提)の勤務が、雇用保険・年金共に調整されず本来の額がそのまま受け取れるため人気です。

健康保険は会社で入れませんので、任意継続もしくは国民健康保険いずれか保険料の安いほうに入ることになります。注意すべきは必ず保険料は2年単位で検討するということ。初年度、任意継続のほうが保険料は安くなると思いますが、次年度国民健康保険は所得が少なければ保険料は安くなります。2年トータルで保険料の安いほうに入りましょう。

(国民健康保険は、市町村によって減免制度があります。たとえば千葉市では「所得見込みが280万円以下、前年所得より30%以上減少」の場合は制度適用可能です)

そして、どちらも前納制度があります。定年を迎えた年は収入、所得が多く税金が多くかかりますから、社会保険料をできるだけ払い、その分を控除してもらったほうがお得です。

(年金、給与、基本手当等合計して年収180万未満なら家族の扶養に入れる可能性もあります)

②通常の勤務形態で厚生年金にも加入
勤務を通常通りにする場合は、雇用保険や年金を考慮し、手取りが最も多くなるような賃金(最適賃金)を算出します。
また、この場合同日得喪の手続きを行い、標準報酬月額を忘れずに改定します。
因みに、退職日を月末にしておくと喪失が翌月1日、すると改定された標準報酬月額はそのさらに1ヶ月後からとなるため、退職日は月末ではないほうが良いでしょう。

・在職老齢年金が支給停止となった場合
可能であれば厚生年金の繰上げ支給を受けることも検討しましょう。
もともとの年金の額が多ければ、少々給与が高くても年金が支給される可能性が出てきます。
以下は、年金を5,000円もらえる基準を示したものですが

年金額 25万円 + 給与等 50万円
年金額 14万円 + 給与等 40万円
年金額   3万円 + 給与等 30万円

年金が3万円であれば、給与は30万円まででないと年金が5,000円ももらえません。
一方、年金が14万円であれば、給与が40万円まででも、年金が5,000円支給されます。
(※繰り上げ支給によるデメリットもあります。詳細は専門家にご相談ください)

・加給年金
年金が全額支給停止となっている場合、加給年金も停止されます。特に女性で、加給年金をもらえるのに停止されてしまったような場合は、上記繰上げ支給を検討し、加給年金を全額もらう方法はないか検討しましょう。

◆その他配慮すべきこと
・本人の委任状をもらえば、会社が年金の受給額見込みを取ることができます。但し、それには前職の情報も書いてあるため、なるべく本人が手続きするか明確な同意を得ておいたほうが良いでしょう。

・また、年金の情報がないと賃金も設定が困難になるため「継続雇用対象者を定める基準に関する労使協定書」に、手続き方法について

第○条 定年退職後の継続雇用を希望するものは、定年退職予定日の○か月前までに、所定の様式で会社にその旨を届けるものとします。
また、そのとき、本人の年金加入記録についても届け出ること。

などと規定しておいたほうがよいでしょう。

・賃金の最適化を行う場合、上限賃金は低くなります。
詳細は省きますが、最大でも27万円ほどで、ここから交通費、固定残業代などを引いた金額が基本月給になります。(賞与も年金が減額されますからあまりお得ではありません)
もし、役割等から考えてあまりに金額が低い場合は、最適賃金の考え方をやめるか、第2退職金としての支給を考えましょう。

※助成金については、要件など一部省略しております。
申請を検討される場合は、専門家にご相談ください。

※賃金の最適化については
http://lsconsul.com/mt/2009/09/60.html をご参照ください。