精神障害等による労災認定

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精神障害等による労災認定(業務上のストレス等によってうつ病等にかかる)が増加しています。
(※申請件数はH20年度に若干減少していますが、認定件数は増加しています)

H11年は認定が14件でしたが、H20年度は269件となり、約20倍です。
また、H20年度は内66件が自殺(未遂含む)によるものでした。

精神障害等の労災補償状況

精神障害に関する労災認定の基準と、該当事例を見てみます。

◆精神障害に関する労災の認定基準
【業務による心理的負荷】

  1. 発病前およそ6ヶ月間の出来事(業務の状態)の心理的負荷が、「強」程度でかつ、その結果同種の労働者と比較して業務内容が困難で、業務量も過大である
  2. 発病前およそ6ヶ月間の出来事(業務の状態)の心理的負荷が、「中」程度で かつ、その結果同種の労働者と比較して業務内容が困難で、恒常的な長時間労働が認められ、さらに過大な責任の発生、支援・協力の欠如等特に困難な状況が認められる
  3. 生死にかかわる事故への遭遇等心理的負荷が極度のもの
  4. 業務上の傷病によりおおむね6ヶ月を超える期間にわたって療養中であり、さらに病状が急変し、極度の苦痛を伴った場合
  5. 数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間も確保できないほど極度の長時間労働により、心身の極度の疲弊、消耗をきたした場合
の1から5のいずれかに該当し、

【業務以外の心理的負荷】

  1. 業務以外で強い心理的負荷が認められない
  2. もしくは、業務外と比較しても、業務による心理的負荷が有力な原因と認められる
のいずれかに該当し、

【個体側要因】

  1. 既往歴、生活史(社会適応状況)、アルコール等依存状況、性格傾向等の個体要因について精神障害を発病させるような特段の事情が認められない
  2. もしくは、個体要因と比較しても、業務による心理的負荷が有力な原因と認められる
のいずれかに該当

した場合に、認定されます。
そして、心理的負荷については、こちらの表を基準に判断されます。
負荷評価表

◆自殺
上記により、業務による心理的な負荷によってこれらの精神障害が発病したと認められかつ、精神障害によって、正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、または自殺行為を思いとどまる精神的な抑制力が著しく阻害されている状態で行われたもの

と認められた場合、労災認定されます。

◆認定事例①
・プロジェクトリーダーに昇格
・プロジェクトでは高度な技術が求められ、その会社でも初めてのものであった
・会社からの特段の支援もなく
・1ヶ月あたり90~120時間におよぶ時間外労働が3ヵ月半続き
・業務以外の心理的負荷、個体側要因は見つけられなかった

◆認定事例②
・支店長に昇格
・昇格後から売上目標(ノルマ)を達成できなくなり
・顧客確保のため困難な折衝と責任を負い
・相当な時間外労働を行う
・複数の部下が急遽転職、周囲からの支援も得られず
・結局大型顧客を奪われてしまう
・業務以外の心理的負荷、個体側要因は顕著なものがなかった

◆認定事例③
・学校内で殺害された遺体を目撃(直接の被害者ではない)
・事件直後からPTSDと診断

◆企業にとっての問題
・労働保険料が上がる可能性があります
・労働保険料を納めていなければ、治療その他費用のすべては企業負担となります
企業に損害賠償を求められる可能性があります。
特に、判断基準に①業務量が過大、②恒常的な長時間労働、③周囲の支援・協力がないというものがありますが、これらは会社の責任を問われる可能性があります。

「使用者は・・・業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないように注意する義務を負う」{電通事件、最高裁2000/3/24判決}
からです。

この義務を故意または過失により履行しなかった場合、企業側に労災ではまかなわれない「慰謝料」「逸失利益」等の支払いが命じられます。

◆判例①
・勤務後すぐに、多くの同僚が退職
・その結果主任保母(責任者)に
・以降学習、新規導入コンピュータに関する打合せ、年間指導計画作成、お遊戯会準備に奔走
・園長等の協力も実際には十分ではなかった
・朝7時頃家を出て、午後7時頃帰宅、その後も午後11,12時まで仕事、日曜日も出勤
・精神病を発病
・退職後、自殺

高裁は
逸失利益 31,236,779円
慰謝料   20,000,000円
葬儀費用    1,200,000円
8割減 △ 41,949,425円 (自殺以外の解決方法があり、本人の性格、心的要因の問題)
弁護士費用 1,000,000円
合計     11,487,354円の支払いを命じています。

◆判例②
・企画課長(管理職)に昇格
・昇進後の業務はそこまで過重な負担を課すものではなかったが
・本人は業務の負担・ストレスにより退職したいと上司、配偶者に相談
・いずれも継続勤務を要望
・父親が死亡し、その後自殺未遂
・自律神経失調症との診断もあったが、会社側は出勤を要請
・自殺

高裁は
逸失利益 54,329,411円
慰謝料   22,000,000円
葬儀費用    1,200,000円
弁護士費用 1,500,000円
※こちらも、本人の心的要因、遺族らの落ち度もあったことから(ここから)8割を減額

参考:
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-15.pdf

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